タチアナ・ラザイエフの文学性

2018/05/02

 ロマサガ3における重要人物。タチアナである。

 彼女について考えたい。

 何度も言っているが、私がロマサガ3のなかで一番好きなキャラである。
 家出少女である彼女は、出会うたびに名前を変える。

 そして、リブロフに近づくと「この町キライ!」とか言ってパーティから抜けてしまう。

 リブロフでラザイエフ家に行くと、末娘のタチアナが家出をしている事を知ることはできるが、それだけなのである。ストーリー上、明確に彼女がタチアナだと語られることは無い。

 状況証拠が語っているだけで、実はタチアナではないかもしれない。

 

 このゲームには、時間の関係ではしょられたのか何なのか、タチアナを語るストーリーはそれ以上、どこにも無いのである。

 ミューズについてもそうなのであるが、語られない部分の多さが、名作として、ロマサガ3を昇華させていたようにも思える。ミロのビーナスのように。

 

 さて、ストーリー中において、彼女がラザイエフ家に戻ることは無いし、彼女の家を取り巻く環境が何か改善するという事もない。

 だが、彼女は懸命に共に戦っているのである。
 世界の危機に瀕して、家を捨て、街を捨てた彼女が、その街や家を内包する「世界」を救うために「怖いけど戦う」のである。

 このキャラだけ、大きく一線を画しているのである。

 彼女の世界は何も解決していない。
 家族の事、自分の先行きの事、家のこと、そこに渦巻く解決しがたい自分の感情。

 だが、彼女はその中にあって、破壊するものに立ち向かうのである。

 

 プレイヤーは思い描く。
 世界を救ったのち、彼女はラザイエフの家に戻るのか。あるいは戻らないのか。そして、彼女自身の境遇にいかにして決着をつけるのか。

 

 普通のゲームであれば、事の原因をたどり、和解するイベントがあって、親と分かりあって、「でも、今は彼らと旅に出たい!」とか言って、家族もそれを応援してなごやかに旅が続くところである。

 おそらく、ロマサガ3のキャラのなかで、最も語られるエピソードが無いキャラのひとりでもある。

 だからこそ、タチアナはあんなにも魅力的なのである。
 ちなみに、毎回街で避けるのが面倒くさいと思っているプレイヤも少なくないのであるが、思い切って一度仲間にしてみてほしい。

 固定装備クマちゃんも良い味を出している。

 着の身着のまま家出してきた彼女が、唯一手にしてきたのが「クマちゃん」なのである。
 幼き日から、苦楽を共にしてきた存在だったのだろう。

 家出、放浪という過酷な選択の中にあって、本来であれば、何の役にも立たないであろうクマちゃん。

 だが、このクマちゃんが、どれほどタチアナの支えになったかと思うだけで、多くの物語を思い描くことができる。幼き頃、幸せで笑顔があふれていた家族との日々。そんな思い出を見守ってきたクマ。

 そんなクマちゃんとともに、御しえぬ感情を抱え、彼女は破壊するものに挑むのである。怖いけど戦うのである。

 ぜひ、タチアナをもっと使ってもらいたいものである。

 リマスター版では、真っ先に仲間にしてほしい。

 

 天の神様
 「ちょっとこわいよ・・・でも戦う」なんていう彼女なりの決意の言葉が素敵でした。
 リマスター版で、彼女が壊されることがないよう

 父と子と聖霊の御名においてお祈り申し上げます。

 

 えいめん!